はだ産婦人科クリニック【札幌市/西区・手稲区】無痛分娩にも対応

産科・婦人科・小児科(新生児)・麻酔科

羽田さん通信

硬膜外無痛分娩は「車」なら「シートベルト」!?

2020年08月19日 | 未分類 | 

2020年8月19日 水 晴れsmiley

お盆休みの外来3連休も終わって、これから北海道は、一雨ごとに寒くなる季節とも言います。
が、今年はもう少し残暑が続くとの予報

暑さには日頃から強くない僕ですが、コロナで不安定な夏を楽しまなきゃと、デブ我慢しています

最近、コロナ騒動で、まっとうなお仕事の話を書いていないので、ここ半年の思い出症例と、教訓をいくつか

7月に出産された妊婦Oさん。
当院で2人目の出産のため通院してくれていました。
前回の出産は、5年前で、妊娠29週から2か月近く、切迫早産で入院管理の既往があって、その時は一時退院した後、ご本人の希望で普通分娩された経験の持ち主です。
5年前でも無痛分娩が7割以上の当院。
その中で普通を希望され、切迫早産後ということもあって、深夜に陣発して未明3時台に出産。
さすがの安産でした。

今回は、5年あいての妊娠。年齢も30代末になっていました。
前回の妊娠経過も踏まえて、妊娠初期から、早産の予防として子宮頸管縫縮術をしようか、しないで様子を見ようか悩みました。
一時は手術せずに様子見の方針でしたが、21週になって、子宮頚管が短くなり、急きょ頸管縫縮術施行。
術直後はうまくいき退院できたものの、29週でお腹が張って再度頸管長が短縮し入院管理となってしまいました。
入院後も子宮頚管は短い状態が続きましたが、点滴治療などで36週を迎えることが出来て、シロッカー(頸管縫縮術)の糸を抜去して一時退院に

当初、分娩方法についてOさんは上の子の出産も早くて頑張れたし、麻酔なしで、自然に陣痛を待って産む方向で考えていました。
ですが、僕としては、分娩中の急変に対して緊急帝王切開への移行がスムーズで、産後出血などの場合、苦痛を軽減した状態で医学的介入が容易な無痛分娩をお勧めしたいました。

日頃から、妊娠高血圧症候群妊婦・高齢妊娠・肥満合併・巨大児・TOLAC(帝王切開後経腟分娩希望)・低身長・骨盤位経腟分娩希望などのリスクが高い患者さんには、無痛分娩をお勧めしています。
いろいろな緊急事態を想定して・・・。
シロッカー術後の心配としては、糸が通っていた子宮口が瘢痕を作って、分娩の時に裂けてしまう「頸管裂傷」が起こらなければいいなぁと思っていました。

Oさんにも、僕からの提案の他に、入院中のお茶会で無痛経験者の先輩たちが色々話してくれるものだから、だいぶ悩まれたみたいです。
そして無痛分娩方針を決めました。

退院後気分転換に2泊だけお家で過ごされ、37週1日に再入院の計画にし、いざ分娩日
麻酔をして、痛みなく進められたようで、喜んでくれていました。
子宮口は3㎝ほど開いていて、朝9時半から陣痛促進剤の点滴を少量から開始。
10時すぎころから赤ちゃんの心音が少し苦しそうな反応を示しに
10時52分上部腰椎間、10時55分に腰椎仙骨間に硬膜外麻酔を施行。子宮口開大はまだ5㎝でした。
時折赤ちゃんが陣痛で圧迫を受けて、苦しいサインを出しているのを、介入しながら見守り、12時前に子宮口全開。
12:08 元気な女の子を経腟分娩されました。
分娩経過としては、さすがの経産婦さんパーワーを発揮して順調でした。

ですが、分娩前に心配していた子宮頸管裂傷が発生
800gを超える出血一気に出て、子宮頸管を縫って止血しました。

腟内にガーゼを詰めて圧迫止血も追加し、数時間後にもう一度診ようとしていましたが・・・

2時間後、腟内にガーゼがあって出てこないはずの血が、LDR室の床にまで広がる多量出血
診察の結果、頸管裂傷からの出血は止まっているものの、子宮全体が柔らかくて、血液の塊は子宮の上の方までつながっている状態。
すぐに「弛緩出血」だとわかりました。
ザっと1000gは出ました。数えられるだけでも合計2400+

Oさんは意識もしっかりしているし、血圧や心拍数のVital signは安定した数字。
まずは血止めってことで、子宮をお腹と腟内から挟み撃ちにして血を止める双手圧迫術を50分続け、何とか止血しました。
この止血術が、麻酔なしでは陣痛以上の痛みを伴います
硬膜外麻酔を追加しながら、何とか止血に至り、一旦止血術中止し「15分後確認ね」としました。

時間がたって確認の診察をしたら、子宮からまだ出血
分娩時に縫合した針孔からも出血が、止まっていたのにまたジワジワ
これは出血多くて、血を止める凝固機能がおかしくなっていると思い、市立札幌病院の救命センターへ搬送依頼しました、

市立に搬送しても痛い処置をされるだろうなと考えて、硬膜外麻酔を持続で注入する装置を付け、搬送に。
(搬送準備をしている横で、別の妊婦さんの出産があるという忙しい1日でした

Oさんは市立病院で輸血や子宮の血を止めるために、子宮動脈を血管内から詰める手術をして、2日後に元気になって当院に戻ってきてくれました。
医療においてたまにある、悪い予感があたってしまったけど、硬膜外麻酔の効果もあって、あまり痛みに対するう訴えなく、重篤な患者さんを治療できたのは幸いだったと思います。
産科の一番大事なことは、元気な子供を授かって、お無事に退院できることなので叶ってよかった

無痛分娩の賛成・反対について色々な意見があると思いますが、
Oさんのような出産を経験すると、お産に携わる僕としては、「自動車の運転」と「シートベルト」の関係を連想します。

分娩の時、麻酔はなくても分娩はできると思います。(シートベルトはなくても車の運転はできると思います。)
ですが、分娩事故や想定外の出血や急変に対して、麻酔があったから迅速な対応が可能で、事故の被害を最小限に抑えることが出来ると思います。
確かに麻酔の事故も0ではありません。(自動車事故でシートベルトによる傷とか悪さをしてしまうケースもないとは言えないように)

もう少し硬膜外む無痛分娩の理解が進んで、良いことも知られると、安心して出産に臨まれる妊婦さんが増えるんじゃないかな?と思って毎日の仕事に精進してまいります。

長くなってしまいました
Oさん!子育て頑張ってくださいね

 

“硬膜外無痛分娩は「車」なら「シートベルト」!?” への4件のコメント

  1. おはようございます。

    おかあちゃん、赤ちゃん出来たみたい。
    明日、羽田さんに行ってくる。

    この言葉を聞いて、10か月余り。
    切迫で入院中は孫と二人、それはそれは楽しい日々でした。

    あの日を除けば。

    いよいよ出産。
    産まれたよとお婿さんからのラインを貰った時は
    ほっと。

    が、それも束の間、市立病院へ、ICUへ。。
    どうなるの、この年で、孫二人育てていけるだろうか。
    お婿さんが再婚したら、子供たちは新しいお母さんになつくだろうか。

    すっかり娘を殺しておりました。(笑)

    夜になり、お婿さんから、大丈夫との連絡を貰った時は体の力が抜ける思いでした。

    今、親子四人で楽しく過ごしているようです。
    なにより、お兄ちゃんの妹を可愛がる様子は自慢できます。
    これは、今まで愛情いっぱい注いで育てたからなのでしょうね。
    その溢れた愛情が、妹に注がれているのかなって。
    娘夫婦を誉めてやりたいです。

    札幌で良かった。
    羽田さんで良かった。

    先生、、奥様、看護師さん、職員の皆さん、ありがとうございました。

    癌健診など、これからもお世話になると思います。
    羽田産婦人科との御縁が切れませんように。。。。

    心から心から、感謝

    • hadasan より:

      お祖母ちゃんさん 
      この度はお孫さんの誕生おめでとうございます。
      「出産は何があるかわからない」と、口癖のようになっていますが、実際に危機的な状態に陥る人の割合はそれほどおおくはありません。
      今回は、市立病院の皆さんや、当院職員の協力があって、母児ともに元気に家庭生活に入られたことを嬉しく思います。
      待っているご家族の心情もいただいたコメントから、すごく伝わりました、
      「良い結果」だったことのありがたさを、しみじみ感じています。
      これからは、お祖母ちゃん業も忙しくなるかもしれませんが、楽しく、頑張ってください。
      これからもよろしくお願いします。

  2. Oさん より:

    先生、その節は大変お世話になりました。
    出産から間もなく2ヶ月、赤ちゃんは元気にぷくぷく育っています。

    ブログを読み、改めて、先生や看護師さん、助手さん、職員さん、市立病院の方々、救急隊員の方々、皆さんのおかげで今、新しい生活を楽しく送れているんだと、感謝の思いが強くなりました!!

    分娩方法について、、正直私は、普通と無痛の違いは痛みの程度の違いくらいの認識でした。
    痛みはなんとかなりそうだし、何かあったときのため、と言われても、まさか自分の身に何かあることはないだろうし、、なんて根拠ない自信もあったりで。
    そんな私に、何度も普通と無痛のメリットやリスクなど、詳しく説明していただき、無痛分娩に導いてくれたこと、本当に感謝しています。
    (優柔不断で全然決められず、何度も同じ説明をさせてしまい、すみませんでした。笑)

    無痛分娩にしていたから、産後の処置にも耐えられましたし(麻酔なしであの処置は気絶したとおもいます)、体力を温存できていたので、回復も早かったんだなと思っています。

    また、赤ちゃんが生まれる瞬間を、余裕を持ってじっくり見られたことが嬉しく、あれは無痛分娩だからこそ見られた景色だなと、感慨深いものがあります。

    いろんな意見があると思いますが、どんなお産方法でも、母子共に無事にお産を終えられることが一番だと、改めて感じています。
    無痛分娩の良さや知識、理解がもっともっと世の中に広まってくれると、私も嬉しいです。

    長くなりましたが、シロッカー手術から切迫、出産と、長い間、本当にみなさんにお世話になりました。
    長い入院生活も、先生や看護師さんたちのおかげで、楽しく快適でした!
    お茶会も楽しかったです!

    3人目はないと思うので、次は孫を先生に取り上げてもらうことを楽しみにします。
    なのでいつまでも、みなさん、元気でいてくださいね。

    本当にありがとうございました♡

    • hadasan より:

      Oさん お元気ですか?
      だいぶ時間がたってしまいましたが、子育てに奔走されているO家の姿が目に浮かぶようです。
      元気に過ごせる日常を感じながら、毎日楽しんで、頑張ってくださいね。

コメントをどうぞ

*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)