はだ産婦人科クリニック【札幌市/西区・手稲区】無痛分娩にも対応

産科・婦人科・小児科(新生児)・麻酔科

羽田さん通信

TOLACと無痛分娩

2020年12月26日 | 未分類 | 

2020年12月26日 土 曇りsad

12月もあっという間にあと5日。
いよいよ令和2年も終了間近で、例年ならばしみじみゆく年を感じるものなのでしょうが、今年はコロナに支配され、何だかなぁ~

コロナで騒々しい人の世とは関係なく、季節は巡り、さすがに年末の北海道
ここ数日は毎日、氷点下の気温を記録
そういえば先日、冬至だったんだもの 寒いわけだ

ただ、今年は去年や一昨年の様な12月に大雪とはならず
いつドカンと雪が積もるのか・・・
心配しながら待つばかりです。

当院も年末に向けて一直線のこの季節
(イベントも中止したり、忘年会も大きくやるのはやめたりして「年末感」はないんですけどね
年間の分娩台帳とか手術台帳とかパラパラみてみました。

分娩は去年より12-13%増えて終わりそうです。
それに対して帝王切開も増えていました。

ま、どんな妊娠でも元気な赤ちゃんが誕生して、母体が元気でいてくれれば、帝王切開だろうが、経腟分娩だろうがいいとは思います。
ただ、当院の場合は大部分の患者さん(妊婦さん)が無痛分娩希望ってことで来てくれます。
そういう希望の方にはできれば麻酔を使って経腟分娩してもらえたらいいなぁと思って努力しているのが現状。
ですが、今年は帝王切開が9-10%になりそうです。

振り返ってみるとその中に15人のTOLAC(既往帝王切開後経腟分娩施行;長いのでTOLACで)希望の患者さんがいて、3人が帝王切開に・・・
経腟無痛分娩まで行ったけど、分娩進行が停滞して緊急帝王切開になった方。
メトロイリーゼ(水風船)挿入で子宮口を開いたとこで胎児心音低下して帝王切開になった患者さん。
妊娠末期の外来診察で胎児の頭が下りてこなくて、体重管理も難しくなって、帝王切開を僕から勧めた方。
(みんなちょっと前だけど懐かしい・・・)

思い返せば、TOLAC断念して帝王切開になった皆さんは大体が外来診察の段階で、前の分娩経過と児頭の下降などの診察結果を考え併せて「経腟は難しいかもしれません」という話をした人でした。
逆に難しいかな?と思っていたけど、麻酔下にTOLACがうまくいってVBAC(既往帝王切開後経腟分娩)に至った人は・・・
あまり記憶にない
多分、TOLAC以外の出産に比べて、僕自身も「慎重に」なっているから「この分娩は大丈夫!」なんて言えないからかな?

TOLACを希望する人について、ネットで「赤ちゃんの命をどう思ってるんだ!?」とか「危険がありながらそこまでわがままを通したいのか」みたいな産婦人科当事者でもない(と思われる)人が、言いたい放題書いているのを目にしたことがあるけど、まったくネット暴力に近いんじゃ?
当事者である産科医と患者さんが、慎重に慎重に慎重~~に方法を選んで、出来ると判断したなら希望をかなえてあげればいいだけだと思うのですよ。
その判断は医者それぞれで違うし、分娩施設ごとでも麻酔科医をすぐに呼べるのか?スタッフ数は手術に対応できるかなどの要件で緊急帝王切開への対応が変わるので、病院によって全く方針が異なります。
だから一概にTOLACができるからいい!できないからダメって話ではないです。
ネットに答えを探す方がヤボってことです。

TOLACをしたいという理由も、妊婦さんが「我がままだけ」でしたい!なんていう人は滅多にいないと思います。
上の子がいて、身の回りのお世話をしてくれる人が旦那さん以外にいなくて、長いお休みが取れない・・・とか
前回の帝王切開後の心的・肉体的苦痛を思うと恐怖で・・・とか
子供を沢山ほしいのに帝王切開は2-3回しかできないと言われた・・・とか
(個人的には、お母さんになるうえで「1度は下から産んでみたいから」でもいい理由だとは思いますけどね)

患者さんも医者も、助産師さんも、それぞれにみんないろいろな考え方があって、みんな正しい
ただネットとかに登場する「外野」がちょっと集めた情報で、人の人生の方針に口出しするのはなぁ・・・( ^ω^)
今となっては忘れられた?かもしれませんが、2000年より前はTOLAC/BVACは当たり前に行われていて、全然珍しいことではなかった。

僕からのアドバイスができるとしたなら、どんなお産には危険はあります。TOLACではそれが更に少し高くなる。
だからこそ、ちゃんと病院へ行って相談してください ってことですかね。

当院では、TOLACの場合は全例硬膜外麻酔挿入下に、計画分娩で緊急帝王切開にいつでも移行できる準備をする条件のもとトライします。
無痛分娩はそういう場面では大いに力を発揮してくれる方法だと思います。
出来るだけ日中の分娩にもっていくことでスタッフ人員の確保も可能になるし、硬膜外麻酔での無痛分娩がこれからの分娩方針の選択を少し変える可能性はあるかもと思っています。
(だからと言って、「麻酔下ならみんなうまくいく」でもなければ、「無痛の病院ならTOLACできる」って訳ではないですよ。お間違いないように)

方針決定に大切なことは、過去の分娩経過や帝王切開の方法・理由と今回の妊娠経過のしっかりとした評価、そして家族の思いが一致して病院と話し合って決めることです。

年末の振り返りがずいぶん長くなってしまいました
次は短い記事か書こ

“TOLACと無痛分娩” への5件のフィードバック

  1. 中山 より:

    はじめまして
    私は1月の頭に第一子を出産しました。
    計画無痛分娩で、子宮口全開でいきむ寸前に、臍の緒が絡まり胎児の心拍低下と回旋異常(顔が上を向いていたらしいです)で、緊急帝王切開になってしまいました。当時、帝王切開を受け入れれず術後、赤ちゃんや旦那さんへの申し訳なさや悔しさなど色々な感情があり毎日泣いていました。赤ちゃんと同室になってからはあまり泣かなくはなかなくはなりましたが、やはり他のママ達を見ていると普通分娩できて羨ましい反面、負い目を感じだりなど気分が沈んでいました。そこで調べていると、TOLACというものを知りました。危険性も合わせて調べましたが、2人目(3年後に欲しいと思っています)を希望するとなると回復が早い方がいいなと思ったりで、やはりトライしてみたいなという気持ちが強いです。TOLACを無痛分娩で落ち着いてできるのがすごく魅力で理想の出産の形です。しかし、私は愛知に住んでいるので、なかなか厳しいですよね?出産の時だけ里帰りのように行ければ可能ですが、TOLACはそのような形は無理だなと思いますが、諦めきれずコメントしてみました。愛知には、はだ産婦人科クリニックさんの様な、理想の出産の形がなく、変な力が入ったりして力みすぎたりして結局帝王切開になってしまうのではないかと不安です。知識も未熟なのでそこも合わせてなにか解決策はないかなと思いました。ご教授いただけるとありがたいです。

    • hadasan より:

      中山さん はじめまして。コメントありがとうございます。
      初めての出産が大変なものだったこと、大変お疲れさまでした。そして、無事に元気な赤ちゃんを授かられたことおめでとうございます。後方後頭位(赤ちゃん上向きの出にくい姿勢)で胎児心音低下しての緊急帝王切開ですと、さぞご担当の先生も大変だったと思います。適切な判断をして健児を得られよかったと思います。
      出産とは幸福なだけの出来事ではありません。
      今回の様に、分娩の最中に赤ちゃんやお母さんの急変で、何とか帝王切開で赤ちゃんの命を授かり、母の命は保てたというケースに時々遭遇します。情報社会の弊害かもしれませんが、「出産は無事に終わるもの」という偏った情報の中で、妊婦さんは近い将来を思い描き、安楽な産褥生活を予想することが多いと思います。
      ですが、私たち産婦人科医はどちらかというと最悪の状況を想定して患者さんの人生の「一大事」に立ち会っています。だから、帝王切開でも無事にお母さんになられたことを心から祝福したいと思います。
      おめでとうございます!(^^♪
      TOLACについては様々な意見があって、それぞれの分娩施設が患者さんの安全や幸せを第一に考えて、それぞれの方策を考えていると思います。当院では…という記事を書かせていただきましたが、当院でも緊急帝王切開になってしまう患者さんは5%程度いますし、ぼく個人的にも「どの施設でも麻酔してTOLACするべきだ!」とは思っていません。もし次回妊娠でTOLACを希望される気持ちが強い時には、愛知県にも、当院に近い考えや、別な方法でも安全を考えて経腟分娩トライしてくれる施設があると思います。あきらめずにその時が来たら探してみては如何かと思います。なんだか答えになっていませんかね?(^^ゞ 何かのお力になれることがありましたらまたコメントください。
      今のお子さんを授かった幸せをかみしめて、子育て頑張ってください!

  2. おおの より:

    はじめまして、はだ先生。看護師のおおのといいます。
    先生のブログを2年位前から拝見させていただき、先生の妊娠出産赤ちゃんやお母さんへの優しさがとても大好きで、先生の所で出産したいと思っていました。ですが、私は第一子(もうすぐ4歳)が緊急帝王切開になり、次も帝王切開した病院で出産なら帝王切開ですと言われているので、諦めていました。
    自己流で1年位妊活を初め、なかなか第二子が妊娠できてません。第一子は39週3日で高位破水で、5日経口陣痛促進剤、6日陣痛促進剤点滴、7日陣痛、陣痛促進剤、吸引分娩4.5回やった所で胎児心拍80〜90台に下降し、緊急カイザーでした。開けると、臍の緒が首に2巻していて、子どもの頭も大きいのもあって、引っかかってしまっていたかなと先生から説明されました。子どもは大きい方ですがそこまで巨大児でもなく、3800gで、私が18kg位太ってしまい笑笑、そのせいだと思います。
    あと、わたしはアレルギー体質で常にステロイドは飲みませんがアトピーです。体質のせいも仕事で手荒れのせいなのか、セファゾリンの点滴を打って薬疹と鼻水などの症状がでた事があります。帝王切開した時、呼吸がしづらい感じがしたのもあったので、セフェム系のアレルギーが出ていたのか分かりませんが、術中出血は900しました。セフェム系がダメになるのですが、それもTOLACができない理由にもありますか?
    帝王切開した時、子どもは真っ青で数秒間呼吸が止まり呼吸が苦しくてうんちもだいぶ吸ってしまったと聞き、またそんな事があったらと思うと怖いし申し訳ないんですが、自分の母が昔TOLACで後に3人産み、私も子沢山がいいし、産んだ後すぐに抱っこしたいです。
    わたしは室蘭に住んでいて、先生の所で出産、出産もできればTOLACしたいです。出産についてはまだ妊娠もしていないので、先生へ相談はまだ早いと思って、ウェブサイトから先生のお考えをちょこっと聞きたくてコメントしました。
    わたしは妊娠前は生理困難が全くなかったのですが、帝王切開後から年々生理痛排卵痛が酷くなり、先日婦人科でエコーや見てもなんともないけれど肛門側に圧痛が強く子宮内膜症と言われました。妊娠希望もしてるからピルは処方してもらいませんでした。今まで手持ち鎮痛剤でなんとかしていたけど、苫小牧の婦人科HPに先生のお名前があって、婦人科に頼ってみようと思ったきっかけになりました。
    子宮内膜症も含めやっぱりTOLACは諦めたほうがいいんでしょうか?
    先生、わたしは妊娠していませんが、先生の所で診察受けられるんでしょうか?

    • hadasan より:

      おおのさん コメントありがとうございます。
      第1子の出産は大変だったのですね。
      前回の出産の情報を拝見しますと、大きな赤ちゃんで全開まではiいったものの、臍帯巻絡があって、胎児心音低下が直接の原因で帝王切開になったと見えました。母体体重増加もマイナスに働いたかとお見受けします。帝王切開の理由としては、あまりアレルギーは関係ないと思います。
      全開の帝王切開から十分な時間も経過し、前回帝王切開の術式が問題なかったり、次の妊娠経過に問題がなければTOLACを念頭に分娩方法をじっくり考えてもよいのではないかと思います。妊娠出産はケースバイケースですので、みんな大丈夫だとかダメだとかは前もって判断できないと思いますが・・・。
      ちょっと遠いですが室蘭から来られる患者さんもいますので、無理せずに通院できそうな状況であれば、何かお力になれればと思います。おおのさんにとって良いことがありますようにお祈りします。

  3. おおの より:

    はだ先生お忙しい所、診察のように相談にのっていただきありがとうございました。
    子宮破裂のリスクがあっても、赤ちゃんを早く抱きたい、顔を見たいとやっぱり思ってしまいます。リスクについて沢山ネットに載っていて、こんな願望は捨てなきゃいけないのかなって思っていました。先生がそんな願望もリスク管理しながら対応してくれているのが分かって、本当にはだ先生の所で産みたいなと思いました。
    子宮内膜症でピル飲まず痛いですが、次の第二子授かれるよう頑張ります!そして、受診する時は前回の妊娠経過や術式を書いた診断書など持参して先生のところに行きます!、、、あと体重管理も頑張ります!笑
    はだ先生、ありがとうございました^^

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