新年度 出産一時金支給額拡大の話
2023年4月9日 日 晴れ
あっという間の新年度
4月もはや第1週が終了
光陰矢の如しです ホント
季節はすっかり春らしくなり、里の道端で残雪を見かけることもなくなりました。
手稲の山はまだまだ雪景色ですが
今年は日本中で桜の便りが1週間も早いとか。
北海道もGW前に桜咲くのかな?
「はだ産通信」も月刊化して久しい事態を、我ながら申し訳ないような、後ろめたい気持ちでやっています。
できる限り産婦人科医の本音や、医療をとりまく実情など、これからもできる限り書いていこうと思っています
最近の話題で、産婦人科、特に出産施設でのトピックスは
「出産一時金支給額の拡大」と政府の言う「異次元の少子化対策」でしょうか
出産一時金とは、分娩費用の公的補助金のこと。
先月までは1分娩につき42万円の支給がありました。
「分娩は病気じゃない。だから、けがや病気の時に経済的にサポートしてくれる健康保険制度では保証しない」という考えのもとで、日本中一律、健康保険料を支払っている人やその配偶者は、国保連合会や社会保険支払基金から42万円を補助してくれるという制度。(病気やケガではないという考え方がベースになっているから制度がややこしい。)
病気でないから医者ではない「助産師」が正常出産なら管理しても良いし、病院ではない「助産所」で出産もできるっていうところも・・・
その出産一時金がこの4月から50万円に拡大されました。
日本の現状では産婦人科分娩施設が年々減り続けているし、少子化も歯止めがかからない。
分娩費用の地域格差も大きくて、東京・大坂・名古屋では、平均の分娩費用が普通分娩で60-80万円で、出産一時金はあくまでも補助的役割。
東京の有名な分娩施設のHP見てみると分娩費用として100万円(60万は自己負担持ち出し)。無痛分娩をしたら120~140万円という分娩施設もチラホラ見受けられます。
大都市の分娩施設も激しい競争の中で健康保険の対象ではない「自費」扱いの分娩の費用を決定するのに、食事はフランス料理だとか、美容室とかエステとかのオプションを患者さんに提供して、サービス面で差別化したりして患者さんに気に入ってもらおうと努力していると思います。
同業者としては、料金は高くても病院としての努力して、地域で一定の評価をされて患者さんに選ばれているのであればいいのだと思います。
ですが、物価高に少子化
収入は減ったけど、支出は増え、経営が悪くなった分娩施設は当然多くて、身近な札幌市だけ見ても、小規模の分娩施設だけでなく、総合病院までもが分娩取り扱い中止しましたというところも毎年1-2件ある状態。僕が開業してもう9年続いてます。
このまま分娩施設に対して補助がなければもっともっと閉院が増えて、近い将来お産難民は増えるんじゃないか?と直に感じてます。
施設が減れば周囲の施設にしわ寄せがきて、仕事がきつくなれば産婦人科医もなり手が減るし、寝ないで働いても収入は少ないとか悪循環が現状です。
今回の出産一時金の拡大
報道では妊産婦さんへの経済支援や子育て対策としてという論調が多いみたいだけど、(もちろん出産への負担減は当然ありで)危機的経営状態の分娩施設を援助するための意味もあると感じます。むしろそっち??
分娩施設を何とかしないと、産む場所なくなり、少子化対策どころじゃなくなるし
当院としてもこの4月から無痛分娩の費用をはじめ分娩にかかる費用の値上げをしています。
一時金拡大のおかげで患者さんの自己負担の総計は下がると思います。
出産一時金拡大、そしてこの後に「異次元の少子化対策」として様々な施策が出てくるはず・・・
「分娩の保険適応」の議論とかいろいろ報道が先走っている感もありますが、その辺の少子化対策については次回また書こうかな・・・
今回はお金の話で何となくダークな部分だけど、出産に係わる大事な「裏話」ってことで、ご理解いただけたら幸いです。
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