はだ産婦人科クリニック【札幌市/西区・手稲区】無痛分娩にも対応

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羽田さん通信

産後大出血 子宮型羊水塞栓症

2023年07月30日 | 未分類 | 

2023年7月30日 日 晴れ時々曇り 32℃

 

真夏の札幌。今年の北海道はとにかく暑い。ここ5日以上32~34℃で連日厳しい暑さが続いています。

今年だけでなく、やはり温暖化なんでしょうかね?この暑さもあと2週間で急に秋めくはず・・・と信じて、夏を乗り越えようと思います。

 

さて、7月も月末になってしまいました。今月も月1ブログ(;^ω^)

今日お産なしの週末を過ごしていますが、40件超でまあまあ忙しい1ヵ月でした。こんな生活にも慣れましたが

 

その中に、当院で「初」、僕の医者人生でも「初」の「羊水塞栓症」と思われる病態に遭遇しました。産婦人科の教科書には必ずのっているお会いしたくない産科疾患の代表選手の一つ。若いころは、ホントにあるのかなぁなんて思っていたこともあったけど、どこぞの病院であったらしいよ・・・なんて聞いてちょっとビビってましたが、ついに出ました当院で。

出血がすさまじかったです。

患者さんは3人目のお産の経産婦さん。無痛分娩を希望されて当院に通院してくれていた方。赤ちゃんが大きく育ち、少し浮腫が出てきたなぁと妊娠高血圧症候群の悪化を心配して、37週に早めの計画無痛分娩の為入院してもらいました。

経産婦さんらしく朝来院して、分娩誘発。子宮口が4-5㎝開いたところで硬膜外麻酔を留置して無痛分娩にしました。午後3時には出産になったので大きな異常なく分娩に至ったので一安心・・・と産直後は思っていました。

ところが、産後何だか出血が多い。大き目の赤ちゃんだったし子宮の収縮が悪いんだろうなぁと、子宮の収縮が悪いことで起こる「弛緩出血」と考えて、麻酔を使いながら子宮を圧迫し止血を試みていました。麻酔がなかったら「拷問」と思われる子宮を両手で圧迫して止血します。で、止血を試みるものの、30分近く経過しても子宮が硬くなり止血されるはずが、柔らかめで、腟の中から抑えている手の脇を血が流れてきたりして、いつもの弛緩出血とは違いました。最初はほとんど出ていなかった小さな会陰裂傷の傷からもジワジワ血がにじんできて、おかしいと思いながらガーゼで圧迫し15分後診察予定としていました。「なんか変だな~」と思いつつ。

予定の時間になるころ、分娩室からコールあり、ガーゼの脇を伝って出血が床にまでポタポタおいていると助産師さんから呼び出しあり。「これは普通じゃない!」と判断しすぐさま救命センターへ依頼電話。市立病院救命センターで受けてくれるとの返事に一安心もつかの間。この時点で出血は2L超えですと報告あり、血圧低下に頻脈でショック状態に・・・

これは子宮型羊水塞栓か!?と急ぎ転院態勢になりました。「血が止まらなきゃ命に係わるかも」とか頭をよぎり、救急車から無事下りられるように祈りつつ、ベテラン助産師Yさんを引き連れて乗り込みました。

市立病院救命センターへ到着時は昇圧剤でなんとか血圧50/30を維持。ついてすぐに緊急輸血にCT検査、子宮動脈塞栓術など手を尽くしてくれてようやく血を止めることができたと、翌日お電話くれました。本当に気が気でなかった~

市立病院搬送後も救命センターで出血は2500mlを超え、血液検査でも血栓症的な異常値が認められたとのお話し。そこから今回の命を脅かすような大出血は子宮型羊水塞栓症を疑うとの見解。僕も同意見でした。より精密な検査で診断に近づけるとの事で本州の大学に検体を送るとも話していましたが、命の山は越えましたと知らせてくれて、さらに1週間後に無事退院の知らせも。いろいろ冷や冷やしましたが、患者さんが元気に退院できたことに尽きます。高次医療機関のおかげで重大な結末には至らず心から感謝です。

産婦人科として会いたくはない病気でしたが無事に治り、今回の経験からいろいろ勉強になりました。また産婦人科の難しい一面を経験することにもなり、これからも患者さんや家族のお力になれるように精いっぱい頑張ろうと思い新たにしています。

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