産婦人科・・・その特異な考え方について その2
2018年8月27日 月 晴れ
季節はすっかり秋めいてきた札幌。
曇り雨 と 晴れの日が交互に続き、最高気温が20度まで下がってきて、あっという間に夏は過ぎ去り、もうすぐ冬なんだな~とか感じる今日この頃です。
昔、北海道の気候はお盆過ぎて、ひと雨降るごとに気温は1度ずつ下がる
なんて言う話を耳にしたのを覚えていますが、まさにその通り。
過ごしやすい気温ではあるのですが・・・
さて、先週の投稿で、常日頃感じている
予期せぬトラブルや出血に遭遇することがたびたびある「出産」を管理し、遂行していこうという立場の産婦人科医(または助産師など関係者)が、日本の現状では、未だに多くの施設が普通分娩にこだわり、マンパワーのない夜間の外科的対応も否としない姿勢を維持するのか?そして変えていこうとしないのか?・・・
について少し書いたつもりです。
っその続編を書くことをお約束しまして・・・
出産現場では考え方が施設施設でことなり、何が正しいなんて言う結論はないものと思いますが、僕なりの私見を書かせていただこうかと思います。
面倒くさいこと書くな~とお思いの方はスキップしてください
開業医として5年弱。産婦人科勤務医として10年、南米の田舎町での何でも医者として2年、麻酔科・救急現場中心の4年
これらの時間から、今の出産ついて思うのは
1、出産にはいつも急変がつきまとい、決して安全が確約されたものではない
2、出産には様々な外科的手術が必要になる
3、安全を担保できる大きな要素はマンパワーである
4、今の日本の産科医療の、特に出産を取り巻く環境には余裕がない
ということです。
そんな中、普通分娩を善とする志向の中では
副交感神経優位になる時間的特徴から、自宅で眠りに就こうとする夜間に陣痛発来するケースは、当然と思います。
(大昔、動物だった人間の先祖たちが外敵から目をくらまし、一番無防備で危険な「出産」を無事に終わらせようとした「本能」がまだ残されているから、「夜に陣発」するんじゃなかろうか?)
そんな関係で、妊娠末期は夜に張りが強くなるんだと思います。
(破水で始まるお産は違いますよ 激しく動いてたりした何かの拍子に バシャみたいなのは昼間のほうが若干多いかなって印象あるんですけど・・・)
だから医療的に何も介入しなければ産婦人科は夜のお仕事になるんだと思います。
でも、出産って、日本の医療保険の面からも、実際の手を加えるケースからも
医者がいなきゃならない小さな「手術」が必要になることが半数は超えるんじゃないでしょうか?
分娩に至る前の、胎児心音低下や胎児仮死には、急速遂娩として吸引分娩や鉗子分娩 究極は帝王切開
ちょっと軽いモノでも赤ちゃんの心音が悪いから クリステレル圧出法(いわゆる押し出しね)
助産師さんがどうやっても胎盤が出てこない時には胎盤用手剥離術。
患者さんにとっては産後のほっとした時間にやってくる究極忍耐を要する技。当院で無痛下に行っていると麻酔なしでやっていた日々には戻れません・・・
産後は半数以上は会陰裂傷縫合術が必要です。
(裂傷2度から4度まで程度によって様々。直腸や腟壁のてっぺんまで裂ける大きな裂傷は、お股という狭い術野を1人で小さくなって汗水たらしてひたすらに血を止めながら縫わなきゃならない・・・ たまに帝王切開よりも時間かかったりして)
更に出血多いな~と思ってたら 子宮頸管裂傷なんてのが見つかって、汗水が冷や汗に変わってたり。
そして腟壁に血腫が出来た~ と言われたら血腫除去術
とか、滝のように出血してる!なんて言って呼ばれてったら弛緩出血!!急いで双手圧迫止血術
みんながみんなに生じるわけではないけど、お産の直前直後って何かと気を遣うのです
小さな手術でも
ガーゼ足りないからとってください とか 術野(腟内や子宮口が主戦場)が見えないから展開する機械とって~!とか
人手もいるし、チンタラやってたら出血かさむし・・・
そんな外科的手術が必要な事態が大いに予想されるのに、その出産を「自然なんだから夜でもいいでしょ」みたいな考えを持つ産科医療関係者の考えって、僕的には普通じゃないと思うんです。
どんな診療科でも、出血を伴う外科手術や処置を夜中に持っていくことなんてしないのが、リスクマネージメントの上での基本
大動脈解離や急性心筋梗塞、消化管穿孔やヘルニア陥頓、腸閉塞などなど各診療科に緊急を要する手術ってあると思うんですけど、これら救急疾患以外は出来るだけ日中のマンパワーがある時間に予定します。
ところが「普通分娩至上主義」のもとにある産科医療者は違います。
出産のとき、分娩前なら、急変を脱する一番の手段は帝王切開。
一人で当直や当番をしている分娩施設がほとんどな現在の産科医不足時代
個人病院なら、そこからよその病院の麻酔科医にお願いしたり、助手の産科医や看護師集まるのにヒヤヒヤしたりとみんなつらい思いを何度もしていると思うんですよね。大病院だってそこそこの事情で緊急は大なり小なり大変だと思います。
こういった「危険な産科医療」をできるだけ減らすことが出来るのが、計画出産なんじゃないでしょうか?
普通分娩だから「医者は手出ししないので助産師さんにお任せね」っていうより最初から医者が一緒になってお産に介入してでも、時間的・人的に有利な時間に出産に持っていくことが出来れば、産科医療が抱える産婦人科医不足や現場のストレスを軽減できるのでは?と感じています。
ついでに、立会分娩が普通になった今の出産スタイルには、陣発や破水で旦那が急に休みをとって仕事に「穴」開けるよりも、あらかじめ休み出してるほうが社会的にも喜ばれる時代な気がします。あくまでもついでのメリットです。
色々大変なことばかり書き連ねたけど、この仕事で一番喜ばしいのは新しい命が無事に誕生した時の、妊婦さんやご家族のみんなが喜んでくれることです。
その喜びの瞬間に同席できる「特殊な」医療だということ。
その「喜び」が医療の「ストレス」に勝って、より大きなやりがいに感じられるうちは頑張れる と思います。
そのためには今までの常識を変えてでも、現代に合った、より安全な、ストレスを軽減する方向性を模索する必要があると僕は感じます。
乱文長文にお付き合いいただきありがとうございました
12月にはださんで出産を予定しているものです。
ブログで記載されていたとおり、計画出産により家族への予定を予めおおよそ伝える事が出来、遠方にいる両親にも生まれたての赤ちゃんを見せてあげることが出来ることは私にとって楽しみの1つとなっております。
分娩時は何事もなければ3名までの立ち会いができるということも伺い、主人以外にも早速双方の母親に立ち会いの提案をしたところ、大変喜んでいただけたのも、計画出産ならではのメリットだとおもいます。
そんなことから、初めてのお産は不安や緊張がつよいことが多いと思いますが、羽田さんでお世話になることに決めてからそれらに対する気持ちも和らいだようにかんじます。
無痛分娩に関しては色々な意見がまだまだある世の中だとおもいます。( 周りではまだまだ経験した人もいない事もあります)しかし、無痛分娩予定でいることを友人に伝えると興味をもっている人が沢山いたことにおどろきました。
無痛分娩とゆう分娩方法は知っているけれど、あまりにも情報が少なく選択肢の1つとして考えることができなかったという話がありました( 確かに雑誌などではほとんど特集されていない気がします)
先生のブログを通して、沢山の妊婦さんに、選択肢のある出産ができる世の中になってほしいとおもいます。
Kさん コメントありがとうございます。
情報があふれている世の中で、どの情報を信じて、どの情報を信じないというが一番難しいですよね。
情報の発信源をネットに頼る人が多いために、無責任なネットの書き込みに右往左往してる人を見て、極論「情報なし」のほうが幸せなのではないかと思うこともしばしばです。
そして、情報発信する側からしてみたら、発信情報が1という情報に対しても、受け取る側にしたら1.0~1.9まで1ととられる。
ほんとに様々な受け取られ方をするってことが難しいとこだよな~と常々感じます。
これからもできるだけ正しく伝わるように、発信することを努力していこうと思います。
まだ先ですが、お産頑張りましょうね!(^^)/
こんにちは☆無痛分娩のページに
当院では原則自然に陣痛がきてから麻酔をする
とありましたが、それは医療的処置をなにもせずに陣痛がきてから麻酔をして出産できるということでしょうか?それとも計画的に促進剤を使い、その後陣痛がきてからということでしょうか??
何度もすみません。できれば促進剤を使わず自然に陣痛がきてから麻酔をしたいと考えているのですがブログにほとんどが計画出産だと書いてあったので。。わたしは産道が開きにくいらしく早めに促進剤を入れることに不安があります。計画の場合その予定日はだいたい何週くらいになりますか??
Ab2さん コメントありがとうございます。
当院での無痛分娩について、約5年前の開院当初は、自然陣痛に対して、子宮口4㎝以上の開大になったところで硬膜外麻酔を留置して無痛分娩にしていました。
しかし、最近は38週台での計画分娩がほとんどで、予定の日に頸管拡張操作を行い、陣痛誘発して、確実な陣痛が得られてから(子宮子4㎝開大を目安)硬膜外麻酔を施行しています。
ただし、破水や陣痛発来で予定の日より前に分娩開始の場合は自然陣痛に合わせた麻酔開始も行っています。
このような回答で良いですか?
よろしくお願いします。
ご回答ありがとうございます。よくわかりました。
一言に無痛分娩といっても色々な方法があるのですね☆
またクリニックに相談にうかがいたいとおもいます。