災害的大雪と分娩無償化の新聞取材
2026年1月28日 水 晴れ
真冬の北海道。1年の内で最も寒い1月末から2月の札幌ですが、つい3日前に札幌市は災害的な大雪に見舞われ、市内の交通は麻痺し、今も鉄道やバスなどの交通機関は正常化されず、札幌駅発の電車は今夜は21時をもって線路周辺の除雪の為に運休という事態に陥っています。
3日前の25日(日)は1日で54㎝の雪が積もり、2日間の降雪量は64㎝で48時間降雪量としては史上最多という報道もありました。
ホントにすごい雪💦
交通は完全にマヒして、当院の横の坂は、坂の下で難題も立ち往生していて、窓から見える車道は車は通れず、人の足跡が二人分残っているだけ。目の前の国道でも、至る所で立ち往生の車続出して、雪に慣れた北海道でこんな景色に出会うとは信じられない光景でした。幸い休日で、病院は休みで、病棟の入院患者さんは1人しかいなくて、駐車場の除雪も追いつかなかったので車で面会に来ていたら間違いなく埋まっていただろうなという一日でした。患者さんも「今日は面会来ません」と言ってくれていて一安心したのも微妙ではありますが・・・
翌日の月曜日は電車は全部運休、バスも朝から運休で交通機関は完全麻痺。子供たちの学校は早々に臨時休校を発表し、当院スタッフも出勤できないと電話連絡があったものの、機転を利かせて自家用車出勤のナースに乗せてもらって相乗りっ出勤で何とか事なきを得たところでした。
昨日の火曜日から幹線道路の除雪は急ピッチで進められて、目的地までの時間は普段の2・3倍かかるけど、通る事だけは出来るようになりました。こんな大雪にはこれからも会えないかもしれないけど、やはり自然に勝てない場合は、家にこもって嵐が通り過ぎるのを待つのが一番なんだなと勉強になりました。
さて、先日のブログで北海道新聞社の取材の話少し書いたけど、も少し詳細について。取材の内容は分娩費用の無償化についての現場の声を教えてほしいというもの。
現在政府が少子化対策の一環として「分娩無償化」を検討しているというニュースがたびたび新聞などで情報が流されてきている状況なのですが、妊産婦さんたちにとって出産費用を無償化すればみんな喜んで子供を産むのではないか?という政策。妊婦さんという消費者目線で「良い政策」見たいな報道しかされていないのですが、その実態は何も経済対策ではなくて、生産者側の産婦人科分娩施設のことを何も考えていないということで、我々産婦人科医会では拙速な政策決定よりも慎重な議論を求め、反対の意見を伝えている現状があります。
国民にとって良い政策だと言わんばかりにコマーシャルされ、会議の情報も新聞紙面に少しずつリークされて、当事者の産婦人科医会には、まるで決定事項として新聞を通じて漏れ伝わるという現状。
この問題点は、度々このブログでも書いてきましたが、1つに日本全国で昭和4年からの長い期間、分娩費用は現金給付(健康保険とは別に出産手当金などの形で出産費用を補填する方法)を原則としており、「お産は病気ではない」という立場をとってきました。それによって、都会では各分娩施設ごとに様々なサービスを提供し、施設ごとの付加価値を上げてきたことで、サービス料を除いた東京の分娩費用(60~65万)と最安と言われる熊本の分娩費用(39~40万)では1.5倍以上の開きがあるとされ、これを一律価格にしようとすれば東京の分娩施設は経営が立ち行かないということになるというのです。(様々なサービス料金を含めたらその差はこんなものじゃない)国がどの金額を設定してくるかわからない今の段階では現場は戦々恐々としています。
この話が持ち上がったきっかけは、自民党の菅総理の時に不妊治療の保険化という政策が行われました。これで自民党の政権浮揚の一因になったという話から、総理をやめた菅さんから次は出産を保険化すれば自民党に良い風が吹くとばかりに提案されたものだと、産婦人科医会の方へはまことしやかに伝わっています。
そもそも分娩の費用を負担を少なくすれば子供をうむか?という話。ある程度はインパクトを受ける人が居るかもしれませんが、親として子供を授かったら、出産の経済的負担というのは極一時的な話。ホントは子育てや毎日の生活費や学校にかかるお金の積み重ねが大変なのだと思います。それに、出産費用が高いということで子供を産まないのならば、都会で人気の高額な分娩施設に患者さんが集まることはないはずで、今のご時世は都会では高額な分娩施設の方が先に分娩予約が埋まるというのだから、政策を決める側が民の声を理解していないのではないかと思います。安い分娩施設を探して断られたという話はあまり聞かないし、探せばいろんな費用負担の病院を選べる今の制度で何ら問題ないのに。
地方の代表格でもある北海道では、出産一時金の50万円以内で分娩費用が納まる分娩施設が、北海道内の田舎を中心に多数存在します。都会との費用格差で里帰り分娩の妊婦さんを産んでもらえるというメリットもあって。そういう施設では、50万円以下の分はおつりとして各妊婦さんにお返ししている現状があり、無償化や保険化になればその「おつり」も発生しなくなるので、地方で産んでいる産婦さんのメリットは無くなるし、里帰り分娩も経済的利点がなくなり減ってしまう可能性も考えられる。
高額な都会の分娩施設が危機に陥るばかりでなく、地方では産婦さんの優遇がなくなるデメリットもある制度だと疑わざるを得ません。新聞記者さんには、今回の制度は「国が回転ずしも、回らない職人のすし屋の料金も全部同じにしろと言っているようなもの」とたとえたのですが、採用されませんでした(^^;)
記者さんの取材は40分くらい熱心に話を聞いていただいたのですが、限られた紙面を飾ったのは数行( ;∀;) ですが一面ということもあって、北海道の地方にいる友達からも連絡がありました。「読んだよ」って。
新聞よりもしっかり伝わるかなと思って、長々と書いてしまいました。皆さんには制度を決める側のおいしいコマーシャルばかりでなく、その副作用についても知っていただきたいと思いました。
日本の国が良い方向へ進むよう政治家の方々には様々な意見を聞き政策決定をしてもらいたいと願うばかりです。

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