はだ産婦人科クリニック【札幌市/西区・手稲区】無痛分娩にも対応

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羽田さん通信

蝦夷梅雨 明け?

2016年07月31日 | 未分類 | 

2016年7月31日 日 晴れ時々曇りsmileysad

北海道には梅雨がない

とはいうものの、7月末に必ずと言っていいほど、1週間雨アメあめという時期があります。
通称 蝦夷梅雨(えぞつゆ)

まさに先週から今週にかけてはそんな天気でした。
昨日までは雨がしとしと降っては曇り、そして雨の繰り返し。
気温は22~26℃とムシムシしています。
病院内の湿度計は70%超になってました。

そして今日
久しぶりに晴で気温も30℃ちかくまで上昇。
そろそろ北海道も蝦夷梅雨明けかな?と思える天気でした。
このままスッキリ「夏」になってくれるといいんだけど・・・

今月初旬、またまた投稿依頼がありまして、作文、頑張ってました。
その掲載の医師会誌が刊行されましたので、ちょっとこの場所にも掲載してしまおうと思います。
お断りしておきますが・・・長文なので、お時間のない方はとばしてください
よろしくお願い致します。

 


幸せに気付かない日本人 不幸を知らない途上国人

父の跡を継いで手稲にクリニックを開院したのが平成25年11月。振り返ればあっという間に2年半が過ぎました。毎日の診療は徐々に忙しくなってきて、少しは産科・女性医療の面で地域の健康のお役に立てているのかなと感じつつ仕事しております。
今はまじめに日々診療に当たっている私ですが、4年2か月前まで発展途上国でまったく違った医者生活をしていました。患者さんが1日10人くらいの村の診療所で、何でも屋です。
その時の途上国生活体験が現在の患者さんとのやりとりに、ときに啓示的に働いてくれていると感じることがあります。
その体験の「恩恵」と「後遺症」について私見を書きたいと思います。

私の途上国生活の舞台は、南米で2番目に貧しい国と言われるパラグアイ(以下パ国)でした。現地で仕事をするきっかけは私の出生がパ国であったことに由来しますが、詳細についてはH26.7.20の札医通信(No.563)に述べておりますので今回は割愛いたします。

パ国での生活は地理的な面だけでなく、様々な点で日本とは正反対でした。
内陸の亜熱帯性気候で夏の日中は40℃を優に超えますが朝夕は涼しく、冬は朝の冷え込みが0℃近い気温の日もありました。熱い夏の昼間の時間帯は長い昼休みにみんな家に帰り、暑いときは働かない。仕事はのんびりで、目を離せば木陰でテレレ(マテ茶を氷水で作ったもの)を延々飲んでいたり、昼間からビールを一杯飲んでしっかりお昼寝・・・という奔放なものでした。
産業が農業関係しかないパ国では、大農場を持つ富農がいる反面、失業者はとても多く、田舎町では真っ昼間でも酔っ払いが道路に寝そべって道を塞いでいたり、泥酔者が通り掛りの車を囲んで、酒をくれ、金をくれと物乞いするという軽い恐怖体験をしたこともありました。生活保護なんてないし、社会保障などないも同然で、本物の貧富の格差とはこういうことを言うのだと思わずにはいられませんでした。
私が住んだ日系移住地は、人口3200人のうち600人強が日系人で、55年も経過したのに、今でも街中では日本語のあいさつが飛び交い、お年寄りは「日本語しかわからない」と堂々と日本語でパ国人の使用人に指図して、それに使用人がスペイン語で返事するといった具合で、ホントに通じてるの?と思いました。日系人の家ではテレビはNHKワールド放送しか見ていない家庭が多く、日本の日本人よりNHKの番組には詳しかったです。日々の暮らしでは、映画館もボウリング場も本屋もない遊び環境。大衆が文字を読むのは自国の印刷物では新聞くらいかもしれません。書物に限らずテレビドラマもスペインや隣国の輸入品で、自国で作っているものはほとんどなく、日本のアニメがスペイン語になって何本も放送されているのを見て、日本のアニメ文化の力を感じました。余暇の過ごし方は、大人はとにかくテレレか酒を飲み、カジノでの賭け事も盛んでした。週末Fiestaがあれば朝までラテン音楽でダンスというのが数少ない楽しみです。でもその後、酔っぱらって刃物を持ち出して喧嘩したり、当然のように飲酒運転して大けがしたりで診療所は忙しくなりました。子供はサッカー、バレー、魚釣りが主な遊びで、10歳も過ぎたら広大な畑で車やバイクを練習し、ひっくり返って大怪我という事故も珍しくありません。現地の食事は岩塩のみの味付けの肉が御馳走で、主食はタロイモです。おいしいのですが日本の食事のようなバリエーションはなく、日本のご飯を懐かしく感じました。
国民は大部分がカトリック教徒で、生活習慣に宗教が深く関係しています。日曜には多くの人がミサに集まり、祝日はキリスト教に関係するものがほとんどで、日本でいうお盆が聖週間(復活祭までの1週間)、正月がクリスマス休暇みたいな感じでした。法律も宗教色が強く、堕胎は重罪とされ、12歳の女の子が妊娠して出産というケースを目の当たりにしました(中学校には自分の子供を抱いて授業を受けている生徒も…)。離婚は新聞紙面に3ヵ月間公開しないと認められないなど簡単にはできません。また、貧しい人が富める人から施しを受けるのは当たり前といった風潮が端々に感じられ、まじめに仕事をして地域経済に貢献している日系社会に対してパ国人はとても好意的な態度で、町の人にも「日本人はいいやつだ」とよく言われました。その背景には、国道の舗装事業の大部分が日本の援助でできた事、20年ほど前に行われたパ国の電化事業も日本の援助で行われたものだという話もあるようです。地球の裏側の国にまで貢献している日本の凄さを初めて知りました。
医療では、機器は日本より30-40年は遅れている印象でした(MRIは国内に数えるほど)。清潔に関する概念はおおざっぱで、手術室にウシガエルがいたとか、犬が寝ていたなんてこともありました(手術前には消毒しますが)。一般に医者の姿勢は金がないなら診療しないというのが常識で、医療はビジネスの一つと思われている節がありました。富裕層が入る任意保険はありましたが、皆保険はなく、多数を占める貧困層は各町にある保健室のような無料の慈善病院を受診し、無料の投薬だけもらって、きちんとした医療とは程遠いものでした。
警察が信用ならないのも驚きでした。傷害・殺人・強盗は珍しくない治安状態ですが、袖の下でも渡さなければ警察は本気で捜査してくれません。道路では交通取り締まりと見せかけて賄賂の要求なんて日常茶飯事で、賄賂の渡し方まで指南されることも…。
教育では、半日だけの小中学校の授業が、毎週のように先生の賃金要求ストライキで休校になり、小学校の授業は語学と算数ばかりで、日本のような図工や音楽といったものはなし。現地の大人も文字を正確に書くことは得意でなく、中には読めないという人も珍しくありませんでした。ただ、幼稚園から毎朝国歌斉唱があり、みんな楽しそうに歌います。日本のように大人の理屈を押し付けず、幼少期から国歌国旗を敬い、国や先人たちに感謝すれば、国旗国歌批判なんてないんじゃないかと考えさせられる経験でした。
私個人がスローライフを送るなら、病気や事件での生命へのリスクは日本と比べ物にならないほど高いけど、人々は全般に陽気で明るく、自殺者は極めて少なく、何物にも代えがたい自由があり、とても幸せな時間が過ごせる国だと思います。しかし、教育・治安の点で、我が子にとってずっとここにいるのは難しい選択かと思い帰国への道を選びました。

帰国直後は、多民族の南米と違い、ほとんど同一人種である景色や、街中や国際空港でさえも国旗を見かけないこの国の特殊性が目につきました。でも、国民は規則正しく、食事はおいしいく、街がきれいで、平均的に裕福で治安がいいといった日本の良いところを実感でき、日本が一番いい!と今でも思います。

日本に帰国して4年2か月。
普段の診療で、なぜか不安な顔をして悩みや疑問を打ち明けてくる患者さんが珍しくありません。聞いてみるとその元凶は「よけいな情報」を見聞きして、不安に陥り自分で自分の首をしめている場合がほとんど。
産科の分野では、「専門誌」とかいう怪しい雑誌が、「妊婦の生活はこうあるべきだ」、「○○は食べてはいけない」「してはいけない」と何の根拠が?と思うような情報を発信し、健常な妊婦の行動を制限し、心理的閉塞感を与えています。
雑誌だけでなくテレビのニュースまで、社会主義的、反政府的で、弱者偏重主義に偏った意見をコメンテーターが、公共の電波で私的見解を述べているのが目につきます。
また、「隣の芝は青い」ように、外国を過大広告し、自国を悪く言う報道に洗脳されていたり、天気予報まで「今日は傘を持って出かけてください」とか「不要な外出は控えてください」とか、知らず知らずのうちのマスコミに行動を操作されている一例かと思います。

途上国生活で磨かれたお陰で、私は、これほどまでに国民がまじめで、警察が治安を守り、貧困層に対してもセーフティーネットがガッチリ張り巡らされた日本の社会保障制度の中に生活し、経済的な不安など途上国人にしてみたら無いも同然な状況で、何を不安に思い悩む必要があるのか?私たちの恵まれた環境を実感し、それを支えている国を信じていいんじゃないか?と言いたくなります。
近頃感じるのは、幸せは、他人との比較で生まれも壊れもするということ。
パ国の貧しくも陽気な人たちを思い出し、まずは自分から、情報に流され過ぎず日常に感謝することを心がけ幸せを感じていれば、少しは悩める患者さんのお役に立てるかな?とノンキに思うところがあの生活の後遺症かもしれません。


最後までよんでいただき、ありがとうございました。

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