はだ産婦人科クリニック【札幌市/西区・手稲区】無痛分娩にも対応

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羽田さん通信

反復性弛緩出血

2019年04月15日 | 未分類 | 

2019年4月15日 月 曇りのち吹雪sadlaugh

4月も真ん中の月曜日
お天気は三寒四温の春らしい周期性の天候が続いております札幌市

でも!今日は特に「寒」でした。
病院の外は朝、雨がパラパラ降っているなと思ったら、昼間は雪だか霰(あられ)だか白い粒が降ってきて、一面薄く積もっちゃってました。
風も強いし・・・
これも「なごり雪」なのかな?

さて、病院も新年度2週間が終わりました。
後藤先生の復帰で外来は1.5人態勢くらいのペースで回せています。
患者さんの回転は速くなって良いのだけど、医療秘書のKさんがちょっと大変になってしまったかな?
後藤先生の本格参戦(外来2診制?)に向けて色々考えなければいけないなぁ

先週末の金曜日は新入職員のSさん歓迎会と、事務のMちゃんを送別会でした。
いつものようにどんちゃん騒ぎの宴会になりましたが楽しい夜を過ごし、まだ少し疲れが残っているような・・・
いつものことですが、少々反省しております
ご参加の皆さん、ありがとうございました。

ここからはちょっと産婦人科的な病気の話
少し前になりますが、書きたいと思っていたけど挫折して、書いては挫折の記事があるので・・・

2月に出産された患者さんAさん。
当院で2人目の周産期管理でした。
1人目は1年ちょっと前
不妊治療がうまくいった高齢妊娠とのことで、無痛分娩を希望されて当院に来てくれました。
第1子出産後、胎盤が子宮に残る癒着胎盤が起こり、手で胎盤を剥がして摘出する用手剥離術を要しました。
更に産後2時間に弛緩出血で大出血して、無痛分娩でなければ拷問のような双手圧迫止血術で血を止めながら、市立札幌病院の救命センターにお世話になりました。その時のトータル出血は2500gくらいでした。
幸い無痛分娩で麻酔していたので拷問の痛みは耐えられたとのお話をしてくれました。
輸血などの治療ですぐ元気になって、市立病院からは2日後に戻ってきてくれた大変思い出深い患者さんだったのです。

今回は1月に里帰りで帰られました。
年齢は1つ増えたけど自然妊娠とのことでした。
ご本人もびっくりだったと話されていました。
正月明けに帰省早々受診してくれ、診察したら子宮頸管長が1.9㎝で、そのまま入院管理になりました。
切迫早産の治療としては点滴の張り止めと、前向きなAさんが忍耐強く頑張ってくれたので転院せずにうまく行き、36週2日までもって無事退院しました。
切迫入院から45日目でした。

するとその夜、陣痛発来で緊急入院
自宅滞在時間は数時間だったけど、ちょっとだけ気分転換して・・・
来院時はまだ「切迫早産」の時期でしたが、まだすぐ生まれる所見ではありませんでした。
お茶会しながらゆっくりしてたら、だんだん痛みが強くなってきて・・・
23:30 まだ余裕はありそうだけど子宮口は6㎝も開大。
「産もうか!?」ってことになりました。

そこからはさすが経産婦かつ切迫のAさん。
36週3日になった深夜0:22 人口破膜したらその30分後 0:55 分娩に 
1:03 胎盤娩出してあっという間でした。

出産前は前回の出産の大変だった経験から
「出血が多くなったらすぐに市立病院へ送ってください」と言ってました
でも、今回は弛緩出血気味ではあっても、輪状マッサージと軽めの双手圧迫止血で、産直後の出血は400gくらい。
子宮収縮剤の点滴でその後の出血予防して、無事に乗り越えられた~と思っていました。
1時半までは・・・

そして、すべての命が眠りに落ちた夜中の3時過ぎ。
当直ナースのYさんから。
「Aさん産後2時間だけど出血多いです」との、戦慄コール

駆け付けると・・・
腟内からは多量の血腫が噴出
血腫を取り除いてもだらだら出血は続き、子宮は柔らかくて、マッサージすると固くなし・・・
「また弛緩出血!!(本物)」
とすぐにわかりました。

Aさんにその場で弛緩出血が再び起きている事実をお伝えし、夜勤のY助産師さんと僕は点滴ルートの2本目をとって輸液(なかなか取れず足から・・・)し、子宮収縮剤の点滴増量と血圧を維持するドパミン点滴したり、テンテコマイ
僕は休むことなく双手圧迫止血術(腟の中からとお腹から両手で子宮を挟み撃ちして収縮させ止血します)を継続
圧迫止血もちょっと休むとすぐ子宮が柔らかくなってダラ~って血が出てきてしまう
猫の手も借りたい状態になって、寝ていた副院長も招集し、手を離せない僕の代わりに、Yさんと点滴調節や外回りを頑張ってくれました。

Aさんは予期していたことが起こってしまい、なかなか平静ではいられるはずもなく、じっと止血術に耐えてくれました。
1年前の悪夢が再びと思っていたと思います。
しかし、今回も無痛分娩のために入れておいた硬膜外チューブから麻酔薬を入れて、痛みはだいぶコントロールできたのが不幸中の幸いでした。

その後、約2時間 軽い鎮静を加えながら双手圧迫止血術を、時々助産師Yさんに変わってもらったりしながら繰り返し繰り返し行いました。
東の空が白んできた5時半過ぎ、恐る恐る手を放してみるとどうやら出血はないみたいでした。
じっと出血がないかを注視していても大きなモノはなく、何とか終了。
Aさん、顔色は白いけど、翌朝にはだいぶ元気になってくれました。
今回は出血量は多分1500~2000mlくらい。 
ギリギリ救命センターに搬送にならなかったけど、僕の寿命は少し縮んだような・・・
長い時間片手を腟内に入れて子宮頚部を抑えていたので、その手は固まっちゃって、しばらくの間動かなくなってました

本当におっかない弛緩出血。それが2回も・・・
そしてお産の怖さも再認識させられた出来事でした。

産婦人科の仕事、幸せな時間にも立ち会うけど、一寸先は闇・・・って言うのがたまにあります。
家族のスタートを預かる身として、何があってもいいように準備して、いざって時に動けるように更に磨かなきゃならないなと思いました。

Aさん、大変なお産(特に産後)を2回も乗り越えた頑張りで子育ても頑張ってくださいね

“反復性弛緩出血” への2件のフィードバック

  1. さと より:

    はじめまして!
    2人目出産(普通分娩)の際、弛緩出血で約4リットル出血して、例の拷問のような処置でも血が止まらず、救急で運ばれ、輸血して助かりました。
    今、3人目を妊娠中です。前回の事もあり、不妊外来の方で「今回は帝王切開の方が安全だと思う」と言われ、その覚悟をしていたのですが、いざ産婦人科に移りその話をしたところ、「その理由では予定帝王切開にならない。人がたくさんいる時に産めるし、準備もしておけるっていう理屈は分かるんだけど…」と言われました。
    どうなるか不安です。

    • hadasan より:

      さとさん 前回のお産での記憶から不安を感じ、帝王切開を考えたくなることお察しします。
      ですが、日本の皆保険という制度上、しっかりした「病名」があって、保険適応される「手術」が必要になります。先のことを考え、こうなっては怖いからとか、心配だからということで手術をできる制度ではないのが事実です。
      不安に思う気持ちを持つなということはできないかもしれませんが、苦しみを増やすような情報収集や、ネットみすぎて主治医の先生を信用できないような状況は作らない方が良いと思います。(どうしても医師を信用できないときは関係を築ける医師を探すという方法もありではないかと思います。)
      不安や恐怖の根源は心の中にある「情報」がもとになっていることが多いので、不安や悩みを口にして、一緒に考え解決策を模索してくれる医師や看護師、家族とこの出産を乗り越えていかれることを願います。頑張ってください。

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